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2013-05-13

【パキスタン】下院選挙で人民党が惨敗し政権交代へ

11日、パキスタンで国民議会(下院、公選定数272・小選挙区制。ほか女性留保議席60、宗教的少数派留保議席10)および4州議会(すべて小選挙区制が基本)の選挙が同時に行われた。その結果、暗殺されたベナジル・ブット元首相の夫であるザルダリ大統領とその長男であるビラワル・ザルダリ・ブット下院議員が共同党首として政権を率いてきたパキスタン人民党(PPP、社会主義インター加盟政党)は、汚職問題や経済運営の失政などが集中的な批判を浴び惨敗を喫して政権を失ういっぽう、故ベナジル・ブット元首相時代以来のライバルであるシャリフ元首相が率いる保守中道のパキスタン・ムスリム連盟ナワズ・シャリフ派(PML-N)が過半数をうかがう議席を獲得して、シャリフ元首相の首相復帰が確実となり、同元首相も勝利宣言を行った。クーデターや政変が頻発してきたパキスタンでは初の議会の任期満了による選挙にともなう平和裏の政権交代となる。

PPPは閣僚時代から汚職の噂が付きまとっていたザルダリ共同党首を大統領に押し上げたうえで、憲法を改正して半大統領制から首相を中心とする議院内閣制に移し、議会第1党であるPPPを通じて間接的に政治と行政府をコントロールしてきた。しかしPPPの議席は下院の過半数に満たず、政権基盤は弱かった。そのうえザルダリ大統領に対する裁判所からの汚職の告発やそれを妨げるギラニ首相(当時)の動きが法廷侮辱罪に問われるなど政争が絶えず、アシュラフ首相に代えたものの、政権を維持できなかった(なおアシュラフ首相は選挙前の慣例として超党派の選挙管理暫定内閣に政権を移している)。それでもPPPは劣勢を挽回すべく、ムシャラフ前大統領の与党だった保守中道のパキスタン・ムスリム連盟クアイディアザム派(クアイディアザムは「国父」の意味で、パキスタンでは建国の父ジンナーを指す)と連携して挽回をはかったが、及ばなかった。また、そのムシャラフ前大統領は亡命先から強行帰国して今回選挙に出馬しようとしたものの逮捕されて果たせず、支持者は選挙のボイコットを表明、PPPのアシュラフ前首相も選挙管理委員会によって立候補を認められなかった。このほか、これまで首都イスラマバードで「政治腐敗一掃」を旗印にPPP政権に対し数万人規模の反政府デモを展開したイスラム説教師カドリ師の支持者も、今度はシャリフ元首相とPML-Nへの反対の意思を示し、選挙ボイコットを呼びかけた。

いっぽうクリケットの元スーパースターで国民的英雄のイムラン・カーン党首が率いる中道の反体制・反汚職政党、パキスタン正義運動(PTI)は前回は下院選挙をボイコットしたものの、今回は政治批判票の受け皿となりPPPと並ぶ議席を得るまでに躍進した。ほかに1947年の印パ分離に際してインド側から逃れてきたムスリム難民(ムハージル)を起源とする世俗派リベラルの統一民族運動(MQM、旧名はムハージル民族運動。「モハジール民族運動」の表記も多かった)も一定の議席を確保した。イスラム原理主義政党はそれほど議席を獲得できなかった。

PML-Nが単独で下院の過半数を確保できるかは微妙だが、小政党の協力や無所属議員の入党・追加公認によって過半数に達するとみられている。だがシャリフ元首相はPPP政権の姿勢を「対外追随」としてきたため、いわゆる「対テロ戦争」に影響が出る可能性もある。ただイムラン・カーン氏やPTIのように「無人攻撃機の活動も認めない」とまで強硬な姿勢を採っているわけではない。ただムシャラフ前大統領(当時は陸軍参謀長)に追放された当事者であるシャリフ元首相には、パキスタンで事実上、最大の政治勢力となっている軍部や軍情報部(ISI)との関係が悪化することを懸念する声もある。前述のカドリ師を支える反政府グループも軍部との関係が密接だといわれるが、同グループは同時に「不正選挙を無効にするため」イムラン・カーン氏やPTIとの連携を視野に入れることも明言している。

選挙はパキスタン・タリバン運動(TTP)などイスラム原理主義系を中心とする過激武装勢力が暴力やテロで妨害を図るなかで行われ、政府側も軍隊を含めた治安部隊の大量動員で対策に臨んだ。それでも州議会選挙に立候補していたギラニ元首相の息子が誘拐されたほか、選挙事務所や投票所の爆破なども横行し、投票日にも世俗派左翼政党アワミ民族党(ANP)の事務所が爆破されて多数の死傷者を出した。また暴力とは別に女性有権者に投票させない地区の存在も発覚するなど、根深い女性差別・蔑視が浮き彫りになった。それでも投票率は約6割に達したと報じられている。

なお4州議会議員選挙では中部パンジャブ州(州都ラホール)で同州を地盤とするPML-Nが単独過半数を制し圧勝、PPPとMQMが地盤とする南部シンド州(州都カラチ)はPPPが過半数確保の見通し。カイバル・パクトゥンクワ州(旧・北西辺境州。州都ペシャワール)はPTIが第1党になるものの過半数は得られない模様。バロチスタン州(州都クエッタ)は開票が遅れているが、PML-Nおよび提携する地域政党が優勢とみられる。また下院および州議会にある女性および宗教的少数派留保議席は各党の獲得票ではなく、小選挙区での獲得議席に応じて比例配分されるため、留保議席を含めた全体としても小選挙区制ベースと見るのが妥当である。

現時点での小選挙区の詳しい選挙結果は次のとおり(カッコ内は現時点での前回比だが、未確定のため参考)。

パキスタン・ムスリム連盟ナワズ・シャリフ派(PML-N)130(+59)
パキスタン人民党(PPP)35(-62)
パキスタン正義運動(PTI)33(前回はボイコット)
統一民族運動(MQM)17(-2)
イスラム法学者協会(JUI)7(+1)#前回は政党連合「統一行動評議会」として参加
パキスタン・ムスリム連盟クアイディアザム派(PML-Q)5(-37)
その他・無所属 38
未確定 7

#この後、無所属議員の追加公認などを経て、女性留保議席60と宗教的少数派議席10が各党に追加配分される。

パキスタン人民党 公式サイト(英語、ウルドゥー語)
http://www.ppp.org.pk/
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プロフィール

西形公一

Author:西形公一
もと「民社ゆーす」(旧民社党全国青年部系)事務局長。昔は漫画と法律のことなどをやっていましたが、その後にインド・ネパール・タイなど熱帯アジアの国ぐにとパシュミナを軸とする小口貿易やNPO、研究活動など人とのつながりなどの縁ができて、今に至っています。写真は夕刻のゴア(インド)にて。

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